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(2001/05/05)
書評 非常識合格法
   すばる舎 石井和人(公認会計士)著

 非常識合格法で名を馳せている石井和人氏が新著を出したので早速読んでみました。(我ながら、ほんと勉強法オタクですな・・・)
 氏の旧著は、受験生時代に読んでいました。極端ではありますが、なかなか的を得た指摘が多かったので、よく参考にさせていただきました。
 さて、今回はどうでしょうか。

 全体の主張としては旧著と変わりはありませんでした。必要なことだけを徹底的に暗記せよ、というスタイルですね。私は、彼の述べる具体的かつ細部の方法論についてはかなり異論がありますが、「自分に適した勉強スタイルを確立することが、短期合格には不可欠である」(p67)等の大局的な面では、賛同することの多い本でした。
 特に「基本的なことを網羅的に勉強すればいいのであり、後はそれは自分でいかに運用するかにかかっている」(p109)は、まさに私の目指した勉強法です。(例えばこれは解の公式等は覚えない、導出の仕方を覚えておいて現場で導出する、ということも含まれます)
 ただ、彼はそのためには、薄いテキスト(おそらくクレアールのテキストを指している)を使い、徹底的に覚えろと言っているのです。私も覚えることに異論はないのですが、効率的に覚えるためには、基本書を読んで理解することが不可欠、と主張しているのです。(予備校テキストが理解に不向きなのは、絶対!基本書主義参照)。
 基本論点の運用、すなわち応用の仕方は、基本論点だけを100万回唱えていても身につくことはありません。それがどのように応用されているのか、もしくは、その基本の裏にはどんな奥深い原則が隠されているのか、それを基本書で確認し理解していく作業こそが、応用力の養成に他ならないのです。もちろん、すべての応用論点をつぶしていくのは効率的でもないし、必要もありませんし、できません。「応用のタイプ」というのは、ひとつの科目には共通して流れるイメージがあるので、それをつかむことが大切なのです。応用のタイプさえつかんでしまえば、新たな基本論点を学んだ時に、その応用論点をあえて学ばなくても、自分で結論づけていくことができるでしょう。まあ、この点については、この著書では触れられていないので、彼の講座では、応用のための技術も教えられているのだろうな、と解釈しておきましょう。
 彼は受験生を2つのタイプに分けています。ひとつは「網羅的に全内容を理解していくタイプの人」(P67)、もうひとつは「合格のための勉強だけに絞っていくタイプの人」(同頁)。そして網羅タイプが1割弱、絞りタイプが9割強ほどと推定し、網羅タイプは天才肌でどの予備校に通っても一発合格すると言っています。正直なところ、私はこの分類の意味することがわからないのですが、まあ、どの予備校に通っても一発合格する人はそんなに多くいないと思いますけどね・・・。だって5%だとしても、全受験生およそ1万人のうち500人を占めることになってしまうでしょ。彼は「10人のうち1人いればいいほうでしょう」(p67)と述べていますが、実際、そんな天才肌は、100人に1人もいないと考えるのが現実的でしょう。
 さて、妙に細かい部分の批判をしてしまいました。ただ私は、天才肌と普通の人という分け方ならばともかく、「網羅的に全内容を理解していくタイプの人」と「合格のための勉強だけに絞っていくタイプの人」に分けるのはいかがなものかと思ったのです。あまり論理的な分け方ではないですね。
 石井さんの勉強方法論それ自体はそんなに批判する部分がなくても、彼の文章が論理的ではなかったり、扇動的であったりするため、私にとっては最終的にうさんくさい、説得力のないものとなってしまうのです。こういう人は、私の経験上、よくできる人、自分の考えに妄信的についてくる人には親身になるのですが、それ以外の価値観を持つ人を認めなかったり、冷たい態度をとるようなことが多いのですけどね・・・。彼はそういうタイプでないことを願うばかりです。
 次に彼はご自身の予備校の財表の答練の回数がたった12回で少ないことを自慢されています。私もそんなに答練は数多く受ければいいとは思っていません。しかし、私が通っていたTACでさえ、財表の答練は10回でっせ、先生、大丈夫ですか。私は、8回(基礎期2回、応用期2回、直前期4回)でいいと思っています。
 また彼はクレアールで定員制(現在は800人)をとっていることを自慢しています。きっと今は定員割れの状態なのでしょう(だから著書を出して宣伝しているのでしょう)が、定員をオーバーする受講希望者が来た時に入学テスト等をするつもりなのでしょうか。だったらもし私なら絶対受からないでしょうね。簿記のボの字さえ知らなかったのだから・・・。上級講座だけに限っても10月の時点だと入門Vが終わったばかりのころか・・・。
 ちなみに、彼に言わせると「不満や批判ばかり言っている人もまかり間違って合格することもあります。」(p83)だそうです。予備校&講師批判ばかりしている私もきっとまかり間違って合格したのでしょうね。私はたとえまかり間違った合格やまかり間違った人生でも、健全な批判精神はいつまでも忘れないようにしたいと思っています。でも、彼も他の予備校&講師&受験生を批判しているんだけどなあ・・・。

いろいろいちゃもんもつけましたが、大原の700点合格主義と同様に、何かと示唆に富む本ではあります。信者になる、ならないは別にして、勉強の気休めにいかがでしょうか。

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