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試験制度の特徴

1 受験資格が厳しい
2 合格率は約50〜60%

 三次試験は原則として二次試験合格&補習所卒業&実務経験(場合によるが一般には補習期間を含め3年)という条件を満たさなくては、受験資格がない。受験資格の点で二次試験と大きく違うのである。つまり、それなりにレベルの高い者同士の戦いなのだ。相対試験であるから、合格率50%といってもあなどれないのが特徴である。また一方で合格率50%という点から、「受かって当たり前」という雰囲気が自分の周りにあることがある。それも厳しいプレッシャーになるものだ。
 一方で、通常は「働きながら勉強する」という多くの二次試験受験生には体験しなかったことを実践する必要がある。これの巧拙が、もっとも合否に関係すると私は考える。仕事ができる=勉強ができる、ではないからである。だいたい会計士補レベルで「仕事ができる人」というのは、「他の人より時間をたくさん使っている。たくさん仕事に集中している。」場合が多い。(もっとも能力的に足らないせいで、多くの時間を使う人もいるが・・・。)。二次試験合格後2年ほどして、ある程度成功している自らの仕事スタイルを再構築するのは、意外に難しい。そういうわけで、たいへんな負担となるのである。
 また二次試験合格後、監査以外の企業に就職した場合などは、かなり不利になると予想する。


試験科目の特徴

 三次試験の受験科目は、監査実務、会計実務、分析実務、税務実務、論文の5科目である。
計算力と論述力の双方が必要とされる。

試験時間 計算力:論述力 配点
監査 3時間 1:9 200点
会計 3時間 6:4 200点
分析 3時間 6:4 200点
税務 1時間30分 7:8 150点
論文 1時間30分 0:10 100点
合計 850点

*筆記1日目:監査、分析   2日目:会計、税務、論文


てな感じでしょうか。
二次試験に比べ、計算力が要求される、と私は思いました。ただし、二次試験での計算力と、求められるものが違います。二次試験の計算力は、簿記の構造問題、原価計算の原価算定、であり、「与えられる情報はきっちり」していて、それを、「どの方法を選択して」「その方法に忠実に計算できるか」という能力を問うものが多いのですが、三次試験においては、「
与えられる情報は、無駄なものも含めて膨大」で「必要な情報は何か」「その必要な情報を抜き出せるか」という能力を問うものが多いように思います。三次試験の計算式は簡単なものが多いです。しかし、その計算式に当てはめる数字を資料のどこから持ってくるか、が難しいものが多いと思います。また、「知っていれば解ける問題」も比較的目に付きます。裏を返せば知らなければお手上げにになるものです。さらに裏をかえせば、こういう問題が多いということは、直前の追い込みが利きやすい、ということでもあります。ですので、最後まで踏ん張って勉強したものが合格するともいえましょう。あまり、事前からコツコツタイプの試験ではないと思います。(ただし、監査は例外・・・これはコツコツ実務で問題意識をもって勉強していかないと高得点は難しいでしょう)。

 もちろん、例外もあります。平成14年三次試験の会計実務では、二次試験の拡張版みたいなキャッシュフローの問題がでていますし、二次試験類似の問題がでることも稀ではありません。しかし、全体のトーンを考えれば、上記が妥当するかと思います。
 一番のやっかいな点は、二次試験ほど、
出題傾向が一定していない、ということでしょう。
では科目別にみていきましょう。


監査実務

 監査をやっている人にとってはもっとも取り付きやすい科目でしょう。逆に普段監査をやっていない人にとってはかなり苦しい科目になることは間違いありません。監査で問われる事は2つ。
委員会報告書などのドキュメントを読んでいるか。
普段の監査を自分の頭で考えてやっているか。

ということかと思います。
委員会報告書などは二次試験でも読んでいるでしょうから、そんなに恐れることはないでしょう。これは直前の追い込みでも十分に間に合うと思います。問題は、普段の監査の方です。
 監査実務は通常、事例問題で出題されます。私のときの第1問は、「あなたは株式公開を目指す会社の初度監査の責任者である。」という設定で、会社からの相談にのったり、あるべき会計指導をしたりします。つまりあなたは「どうしますか」という点が、もっとも大きいのです。理論的な背景もあわせて述べなさい。という問題ももちろんでるのですが、究極は「どうしますか」という「具体的な行動を書く」ことが求められます。具体的というのはどの程度かといえば、監査手続書に書いてあるような言葉です。出荷報告書と補助簿を突合する、みたいな感じのものですね。次に、「留意点」を聞かれます。単純に出荷報告書と補助簿の突合にしても、金額だけでなく、出荷報告書の日付、適切な承認を経ているか、不自然な手書訂正がないか、などの留意点がありますよね。
 で、ちょっと監査実務の答案のひねり出し方を考えてみました。

どうしますか? → 大事な監査要点は何か → その要点に即した内部統制があるか → 内部統制の評価に即した監査手続を書く → その留意点を書く

書けば当たり前のことですよね。普段監査をやっていれば、自然とわかるものですが、普段の仕事を前任者のマネ事で漫然とやっていると、大事な監査要点は何か、という点がわからなくなります。これがわからないと後の答えがちぐはぐになるわけです。
これはなかなか机上ではわかりにくいですから、普段監査をやっていない方は、かなりイメージを膨らませてやる必要があると思います。またたいくとは思いますが、監査法人の監査手続書をなんとか手に入れて、それを手元においておくとよいでしょう。また、異常点監査の実務という本が、かなり具体的なレベルで書いていますので、普段監査をやっている人も参考までに読まれてはいかがでしょうか。

細かいことですが、これまで監査リスクの中でも統制リスクがメインに聞かれていましたが、ここ2年ほどは固有リスクについて聞かれることが多いようです。某元試験委員に近い人のお話を伺ったところ、受験生は内部統制はよく勉強しているが、固有リスクについてわかってない人が多い、といっているそうです。


会計実務

意外につかみごころのない科目です。というか範囲が広すぎて、すべてを網羅することはできないでしょう。しかし、この科目は普段監査をやっていない人もなんとかなるんじゃないでしょうか。

会計実務の問題の類型は
二次試験のような簿記(連結)総合問題
実務指針の説例の改題
実務指針の理論的説明
注記事項を書かせる問題
細かい表示について問う問題
バカな試験委員が自分の事例で考えた特殊な事例問題

ぐらいに分類できるかと思う。
正直なところ、どれがでるかは予想不能と思います。
4〜5年前の会計ビックバン導入当初は、実務指針説例問題が花盛りでしたが、最近はそうでもないような気がします。とはいえ出ないとは限りませんので、どれも対策をしないわけにはいきません。
ただ、ねえー。全部の実務指針を読みこなして、全部理解して覚えるなんて、まあ、正気の沙汰ではありませんね。やらないわけにはいかないけど・・・。ただし、実務にはものすごく役に立ちますので、やって損はないです。私のときなど、実務指針説例問題はゼロでしたが、それでもあれだけの勉強をしたのは実務に直結で役に立っています。


分析実務

これは、会計の素養があれども、なかなか独学では難しい科目かと思う。
また過去問をみるとわかるが、分析というのはひとつの科目ととらえない方がいい。
財務分析」「企業財務論」「原価計算」の三つの分野からなっている科目である。
予備校では財務分析については詳細に教えるし、この分野は分量も少なく、みなさん軽く見がちであると思う。しかし、最近の傾向は企業財務論(いわゆるファイナンス理論)が出題が多いため、この部分の基礎的素養を身につけておく必要がある。二次試験の経営学でも勉強はしているかと思うが、実務で使うことはマレであるため、大学などでファイナンス理論を勉強したことのない人は、再度、入門から勉強しなおさねばならないだろう。予備校の役割でも述べるが、このファイナンス理論について予備校は手薄だ。なので、自分でしっかりやる必要があろう。
分析は会計監査と並ぶ、3時間120点科目なのに、みんな軽く見すぎている。と思う。
私も軽くみていました、ハイ。


税務実務

 みなさんゼロからのスタートでしょうから、予備校テキストで十分ではないでしょうか。理論で所得税について問われることが最近多いので、1冊ぐらいは所得税の本を読んでおいたほうがいいかもしれません。
税理士試験の法人税法に比べれば、超簡単です。これで税理士の資格が取れるというのですから、税理士が怒るのも無理ありません。税理士の試験の半分ぐらいの難易度ではないでしょうか。(もっとも、税理士試験と同程度の難易度にしたら、全員埋没で点差がつけられないかもしれない)。税理士試験に比べればやさしいとはいっても、多くの会計士補にとっては税務の実務をこなすことは少なく、短い時間で一気に合格圏内まで実力を上げるのは、結構たいへんだと思います。
勉強のコツとしては、理論より計算重視です。しかも計算の最終の答えが出せるだけでは、ダメです。計算過程も書くようになっているので、「税務の規定通りに計算をしていく」のがコツです。
例えば交換の圧縮記帳を例にとり説明しましょう。(わかりやすくするためかなり簡単な例にしております)。

条文での圧縮限度額の計算(交換差金なしの場合)は以下のように規定されています。

圧縮限度額=譲受資産の時価−(譲渡資産の帳簿価格+譲渡経費)


私は勉強当初、上記算式の()カッコ内は、交換で新しくもらった譲受資産の税務上許される簿価と覚えていました。 つまり、「税務は圧縮限度額という規定があるけど、ようはどこまで簿価を切り下げてもいいか、ということだから、交換の圧縮記帳は簿価が決め手」と理解していたわけです。
そして、答練でも、会社が経理した簿価と、上記の税務上許される簿価との差額を税務調整として回答していました。(つまり圧縮限度額を明示的には計算していなかった)

こんな感じです。

問題 譲受資産の時価   50百万円
譲渡資産の帳簿価格 20百万円
譲渡経費         1百万円

会社は35百万円を圧縮し、15百万円の簿価とした。
私の旧来のやり方
あるべき簿価   21百万円 (20+1)
会社経理の簿価 15百万円 (問題文より)
差額  6百万円(21−15) を税務調整


ところが点がこないのです。
なぜだ!?
と考えていたら、LEC答練の採点での指摘されました。「あまり独自のやり方だとよくない」と。
なんでだ!?
そう、計算過程の圧縮限度額にも配点があったのです。
こうすれば点が来たわけです。

推奨するやり方 圧縮限度額   29百万円  (50−(20+1))
会社経理の圧縮額 35百万円  (問題文より)
圧縮超過額 6百万円 (35−29) を税務調整


もちろん、専門学校の採点と試験委員の採点は違うかもしれません。しかし、なるほど、と思いました。これなら、最終的な税務調整の金額があっていなくても、圧縮限度額に配点があれば、部分点はゲットできるわけです。私の旧来のやり方だと、最終的な答えがあっていなければ、試験委員も部分点をつけられないのです。なぜなら、税務の条文にも通達にも、「あるべき簿価」なんて明示的に書いていないのですから。
しかも、本試験ではあわてて最終的な答えを間違える可能性も高い。であれば、なるべく部分点を取れる形で、計算過程を書いておいた方が合格確立が高くなるわけです。

税務実務の勉強法については、まだ別稿で書きたいと思います。


論文

何が出るかはわかりません。過去問をみて自分なりに分析する以外にないでしょう。

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