問いに答えない予備校(Spok's LogV)
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TOP > 問いに答えない予備校批判・・・「問いに答える」のも才能のうち           (2004/11/22)

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何度も述べていることであるが、試験においては「問いに答えること」は、非常に大切である。

これをきちんとやっていない受験生の何と多いことか。
それは、採点講師などしなくても、ちらっと返却答案を見るだけでわかる。

そして、専門家であるはずの予備校講師もこのワナにはまる。

ついつい、知識をひけらかしたりしたくなるのだろうね。
ある程度、実力がついた受験生もそうだ。ついつい、関係のない知識をひけらかして墓穴を掘る。

そんなことを思ったのは、たまたま平成16年のTACの解答速報をちらちらみたからである。

財務諸表論(第3問)の「問2」
(1)『「米国式連結財務諸表』において、新株発行費は資本勘定からの控除項目として処理されている。この処理とわが国の会計基準に従う会計処理とを比較し、両者の相違が生じる理由を説明しなさい」
(2)『上記(1)の事項について、有価証券報告書の経理の状況が「米国式連結財務諸表」によって記載されている場合、利害関係者の判断を誤らせないため、どのように配慮することが必要になるのか具体的に説明しなさい』

これに対してTACはどういう模範解答を載せたか・・・・。
(1)についても多少いたいこともあるが、まあいいとしよう。
問題は(2)の解答だ。

『上記(1)の事項について、利害関係者の判断を誤らせないため、まず、日本語をもって連結財務諸表を記載しなければならない。また、当該連結財務諸表が準拠している用語、様式及び作成方法、当該連結財務諸表の作成状況及び米国証券取引委員会における登録状況、さらにこの規則に準拠して作成する場合との主要な相違点を当該連結財務諸表に追加して注記しなければならない。具体的には、新株発行費は費用として処理せず、資本勘定の控除項目として処理していること等を注記すべきと考えられる』(TAC解答速報2004より)

確かに、連結財規89,90条には、この解答のようなことが書いてある。
しかし、この模範解答は「問い」にほんの一部しか答えていないうえ、
ほとんど余分な記載ばかりである。私が採点者なら、最後の一文にしか点はやらない。

問いが「連結財規に準拠して答えよ」ということならば、まだ、問いに答えたことになるが、問いは「どのように配慮することが必要になるのか具体的に説明しなさい」である。ここで問いに答えているのは、TAC解答の「具体的には」以降だけである。

問いに答えるには、このように答えるべきだ。

『本問の場合、利害関係者の判断を誤らせないために、「連結財務諸表は米国基準で作成されていること」、「日本では一般に費用として処理されている新株発行費が資本の控除項目として処理されていること」、及び「日本における一般に公正妥当な会計処理を行った場合の損益及び財政状態への影響額」を財務諸表に注記する配慮が必要になる。ただし重要性がない場合は注記を行う必要はないと考える。』

これで6割は得点できる。(と思う)

もちろん、『日本語で作成することなど』、連結財規89、90条に記載してある事項を答案に書けば、それは加点事由にはなると思う。
しかし、「問いに答えた」モノホンの解答がなければ、いくら、加点事由だけ書いたってダメだ。

問題文を順にみていこう。
試験委員は
『上記(1)の事項』について、と言っている。だから上記(1)の事項についてを書かなくては成らない。それ以外は余事記載である。余事でも加点事由になる場合もあるから、他の要素をあとで書くのも、まあ試験テクニックとしてはよいが、原則的には余事記載であり、減点されたって文句はいえないことなのだ。米国証券取引委員会における登録状況!?イラネーよ。確かに連結財規には書いてあるけどね。

次に『
どのように配慮すること』と聞かれている。だから、whatでなくHowの要素を答えなくては成らない。すなわち、「注記をすること」の文言が必要になる(これはTACも入れてますな)。そして、解答に「配慮」の言葉ないとダメだ。「どのように配慮しますか?」と問われたら「このように配慮します」と答えるのがもっとも適切である。(TACの解答には「配慮」の単語がないですね) 私がこの問題文に接したとき、一番、気になったのが、この「どのように配慮」だ。心の中で「どのように」「どのように」「どのように」「配慮」だよな、「配慮」だよね、「配慮」ということはどういうことだ、「どのように配慮だよな」と何度も何度もつぶやくことだろう。

そして『
具体的に説明しなさい』と聞いているのであるから、具体的に答えなければならない。だから、「配慮」する事項をなるべく具体的に記載する。

TAC解答がダメなのは、解説にも表れている。
「連結財務諸表規則第89条と90条を問う(2)はお手上げでしょう。このような重箱の隅をつつくような問題で、財務諸表論の理解度を試せるのか疑問です。」(TAC解答速報2004p4)・・・(なつかしい河村先生ですな)

あほかいな、これは、連結財務諸表規則第89条90条を問う問題ではない。
「知らない問題にぶつかったときの、受験生の頭のやわらかさ」すなわち「丸オボエでなく、自分の頭で考えられるかどうか」を試した問題なのだ。
「個別の未知の問題にぶつかったとき、原則とおりに考えられるかどうか」という点が試されているだ。
実務の世界では、未知の論点だらけだ。基準に書いてあるとおりのことだけ処理するのなら、誰でもできるが、専門家としての能力が試されるのは、どこにも載っていない事例だけど、原則から考えればこうなるね、というときなのだ。専門的判断ができるかどうか、なのだ。
それを試験委員もわかっているから、最後にちょこっと、ヒネッた問題を出しただけであって、連結財規のしかももっとも細かい米国式FSの「知識」を問うたものでは全くない。おそらく試験委員は受験生が、もっとも知らないはずの部分をあえて出したのだ。「さて、この受験生は自分の頭で考えられるかな」と。
この問題は、良問だし、ちょっと自分の頭で考えられる受験生であれば、十分に得点できる問題だ。
(この「第3問」は、この部分も含め、全体として、超良問である。資本取引と損益取引の区別という基本だけで、十分に受験生をふるいにかけられる問題だ。)
公認会計士の二次試験とは、こうありたいものである。

それを試験は暗記したものをはきだすものとしか考えていないであろうTAC財表スタッフが模範解答を書くと、ああなってしまい、試験委員批判となってしまうわけだ。
TAC財表が自分の頭で考えてないことを見事に暴露した解答速報といえよう。

もちろん、私の解答が、ベストである、と言うつもりはまったくない。
もっといい答案もあるだろうし、もっと書いてよい要素もあるだろう。
実務に詳しい方からみればおかしいと思う部分もあろう。
影響額まで書くことは規則でも実務でもないんじゃないの?などという批判もあろう。

それは試験をわかっていない批判である。

試験委員は問うている「どのように配慮する必要があるのか」と。決して現行制度を聞いていない。
そして出題意図は「未知の論点を自分の頭で考えられるかどうか」である。(おそらくね)
だから、大原則に従って、自分の頭で考えたことを書けばよいのである。
(もちろん自分の頭で考えたことがトンチンカンではダメだが、利害関係者に上手に説明するにはどうすればよいか、をぎゅっと考えればいいわけだ)

この問いに答えた骨格部分がなければ、何を書いてもダメだ。

これが予備校のいう難問の正体のひとつである。
決して難問でもなんでもない。予備校が間違って難問にしてしまっているだけである。
こういう「難問」(なるもの)に対処するには、基本が大事である。
私が書いたことは、基本中の基本でしょ。これで「難問」(なるもの)から点をもぎ取れるわけだ。
決して、枝葉末節ではない。
満点など取る必要はないのだ。
何度も言うが、私の解答がベストなのではない、しかし、必要にして十分であり、TAC解答よりは点が高いと、私は信じている。


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